アイクレオ50周年を記念しての「アイクレオ子育てエッセイ」に、 たくさんのご応募ありがとうございました。 ユーモラスなエッセイ、心温まるエッセイ・・・・・・ どの作品も素晴らしく、選考にも大いに熱が入りました。 選考の結果、以下8作品が入賞に輝きました。ご紹介いたします。 |
「キリンのけぽ」 | バテ柴犬さん | |
「少し遅れたメッセージ」 | ひびきくんのママさん | |
「魔法の時間」 | ぴぐりんさん | |
「小さな幸せ」 | チナさん | |
「嬉しいサプライズ」 | 篠田真美さん | |
「聴く耳」 | ママユさん | |
「パパの元気は息子の笑顔」 | ぱぱどんさん | |
「お母さんになりたい!」 | 田原直子さん | |
「キリンのけぽ」 | 広島県 バテ柴犬さん |
離乳食を済ませ、私は娘を寝かせるため二階の寝室に向かった。
早く寝てもらわなければ内職が片付かない。ベッドに置くなり、
娘はすごい速さで背這いして、壁際まで行った。背泳選手みたい。
8ヵ月を目前に12kg、74cm。体重のせいか、ハイハイがまだできないが体力は幼児並。
爪切りは寝た時でないと、暴れて指を固定できない。最近はオムツ替えが格闘。
成長速度に私はついて行けず5か月頃、腱鞘炎になった。
大人用のベッドで寝かせていたのが悪いのか、ミルクのやりすぎか
(巨大なイケスに入れた養殖魚状態?)。もうこんなの赤ちゃんじゃないよとぼやいても、
小さくなりはしない。壁に貼ったキリンのポスターに、いつの間にか手足が届いてなんとか
破こうとしている。娘よ、それは母ちゃんがお気に入りの写真だ。
WWFのアフリカ動物カレンダーで何年も前のだけど動物もアフリカも好き
な母ちゃんは、大事に保管していたんだ。あ、キリンさんの脚が。水のきらめきが。
びりびり。嬉しそうに破る娘に、まあいいか、あとでパズルみたいに直そう、とさせておく。
絵本でキリン知ってたからやったんだろうし。よく新聞やぶるけど固い紙は初めてだもんね。
紙質が違うものを破かせるといいとか育児書にあったし。内職は割に合わないけど、
側にいられるからこんなに成長をつぶさに見られるんだ。もっと大きくなったら
母ちゃんとアフリカに行こうね。父ちゃんいないけどがんばろうね。
あ、キリンさんの顔が。びりびりびり。もぐ。修復はカメラ屋さんでも無理だろう。
明日はカラフルなウンチだろうな、とか思っていたら、娘が咳込みだした。
喉に紙屑をひっかけ飲み込めなかったよう。ついで背中を叩く間もなく、けぽ。
さっき食べた離乳食がニンジン色になって噴出した。野菜ジュース飲んでたからだ。
娘とキリンの破片に降り注ぐ、けぽ。パニックで泣く娘を抱き上げて風呂場に直行した。
ごめん、誤飲に気をつけていたのに。目や耳に吐いた物を取り除き、落ち着かせた。
娘が寝た後、布団に張り付いたキリンの首を剥して、捨てた。遠景だった、地平線ちかく
のゾウだか牛だかの影一片だけ、誤飲防止用の物入れに放り込んだ。娘が寝たから、
さあ仕事しなきゃ。いつか、本物を二人で見ようね。
<講評>
一人親家庭の子育てが、温かくもほのぼのとした情景で伝わってきます。離乳食を一杯食べた様子が目に浮かびますね。さあ〜これから寝かせて母ちゃん自身の時間を持とうかな〜、と思っているのに壁に貼っているアフリカ動物のカレンダーを見て、嬉しそうにキリンのポスターを破る娘さん。母ちゃん怒るかな〜ってハラハラして読み進んでいくとあっさり、「まあいいか、これはうちの子の成長だ!」なんて誇らしげに思っている太っ腹な母ちゃん!のどを詰まらせてけぽけぽしている娘さんの世話が大変なのに、弱音を吐かずに二人で寄り添って生きていこうとする力強いイメージが浮かびます。「本物の動物を見に行こうね!」と近い将来のこともついでに夢にしちゃう!!なんて、とてもたくましくて素晴らしい母ちゃんですね。
特定非営利活動法人 日本子育てアドバイザー協会
理事長 木下 敏子
コンセプチュアルディレクター 小谷野 公代
※エッセイの表記は、応募作品の表記に従っています。また、作品の著作権はすべてアイクレオ株式会社に帰属します。
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